読者のみなさん、こんにちは。
先日、この欄でご紹介いたしました、「
小田桐師範が語る チェーンソー伐木の極意」がおかげさまで好評を得ております。
林材業安全技能師範(林業・木材製造業労働災害防止協会認定)として、これまで1万人以上を指導し、プロを育ててきた小田桐さんの言葉の数々に、うなづいたり、なるほどと感銘を受けたり。
本を読まれた方から、いろいろな声が編集部にも届いており、編集スタッフ一同大変励みにさせていただいています。
この本は、チェーンソー伐木の技術、それをどう習得・向上させるかについて小田桐師範のアドバイスが読めるのと同時に、林業者・チェーンソーマンとして生きていく姿・魅力が、さまざまなエピソードで伝わってくる本です。
極上の読後感を保証いたします。
この本を魅力のいったんをお伝えする意味で、編集時で小生自身が惹かれた言葉のいくつかを、以下に紹介させていただきます。(白石)
「小田桐師範が語る チェーンソー伐木の極意」より●チェーンソーマン
「チェーンソーマンは森林整備のデザイナーでなければならないんです。一番最初に山に足を踏み入れるのは、バックホウでもなければ、架線でもない、チェーンソーなんだよね。
やっぱり、チェーンソーマンなんだよ。チェーンソーマンのデザインに次のグループが従う。トラクタグループ、バックホウグループ、架線グループとあったとしたら、どのグループもチェーンソーマンの足跡を歩くしかない。だから、チェーンソーマンはデザイナーでないといけない。」
●指導することとは
「研修の現場で、「わかったか?」って聞いて、「わかりません」という答は皆無ですよ。とても言えない。
だから、「わかったか」っていう言葉を使うこと自体がミステイク。
もし、自分が逆の立場だったときに、「お前わかったか」と聞かれて、はりきって「はい、わかりました!」とは言わないまでも、ちょっともそもそしながら「…はい」ってぐらい言いますよ。じゃ、やってみろって言われるけど、やれるわけないじゃん。わかってないんだから。それで、怒るんですよ、何回言えばいいんだとか言ってね。」
●師匠の思い出
「工夫の仕方にはアドバイスをするけど、仕事にはアドバイスをしないという方でした。…
私には、とっても難しい仕事ですよね。もちろん、径が大きすぎてバーなんか届かないですよ。それをいちいち教えない。「こっちで半分切って、こっちで半分切れば、半分切れるから」っていうぐらいのアドバイス。例えば、ピタッと合わせるためには、何か目印を付けて、こうやんないと合いませんよね、というようなことは教えくれない。
「自分で工夫しなさい。そうすれば、あんたの技術なんだよ。私が話せば、私のコピーになっちゃうんだよ」と言うんです。」
●プライド
「私が初めてグリーンマイスター研修を担当した頃は、周囲には「グリーンマイスターなんか…」と、ちょっと見下げたような言い方があった。私は、それを許せなかった。見下げたような視線に、絶対負けないようにしたいと。」
●事故がある会社、ない会社
「事故がある会社と、ない会社では、ない会社のほうは人間関係がとてもいいです。
始めから話しやすい環境をつくることに努力している会社は、事故があまりありません。道具を整えているから事故が起こらないわけではありません。
…
それから、現場部門と管理部門では、何でも要求するのが現場部門、何でも抑えようとするのが管理部門、といったような対峙する空気が生まれ、その溝がどんどん深まっていくと、お互いに「何を言ってもダメだ」という状況になります。
「現場部門がきちんと働いてくれるから、管理部門もきちんと経営ができるんだよね」、「管理部門がきちんと仕事をもってきてくれるから、現場部門は仕事でき、生活ができるんだよね」といった、相互に尊重しあうような関係がないといけません。そんな関係ができていない会社が、意外と半分くらいはありますね。事故はきまってそんな会社で起きたりします。
…
ときどき、用具などを買い与えて、「うちはこういう体制をとっています」と自慢する会社がありますが、そんな所はたいしたことはありません。それしかないから自慢するんです。いい意味でのコミュニケーションが取れている所は、作業員をよく見て、相談し合っている関係になっているから、用具ではなく自分の所の作業員自体を自慢します。」